- そば畑の向こうに稲穂が光る安曇野
中秋の名月を過ぎ、安曇野は一気に秋の気配が漂いはじめた。虫たちはそれぞれの音色を響かせ、軒下や木立のあいだのクモの巣は、風に揺れてキラキラ輝く。
山桜の葉が静かに落ちると、かさこそと音を立てて動いていった。秋が来たのだ。林の中を歩くと、枯葉がが敷きつめられ、キノコが顔をのぞかせている。
キノコの季節が始まると思うとうれしいが、先日行った福島のことを考えると悲しくなる。野山は放射能に汚染され、キノコはもっともあぶない食べ物になってしまった。福島では何年もキノコ狩りができなくなるのだろうか。
9月11日に信州自遊塾のシンポジューム「信州の自然エネルギーを考える」が無事に終わってほっと一息ついた。自然の美しさに気づくのは、やはり心に余裕が生まれたからだろうか。
秋の光を反射させながら、透きとおった川の流れは水底の石の表情を豊かに見せる。川を眺めながら、シンポジュームの話を思い出した。小水力発電は、幅数十センチの水路でもちゃんと電力を生み出す。汚染水を出すこともなく環境にも優しい。送電ロスも少ないから、無駄な電力を作らないでもすむ。原発につぎ込む莫大なお金を、自然エネルギーのために使うという発想を、どうして政府や経済界の人々は考えられないのだろう。原発マネーに群がる人に、日本や地球を任せたくない。
松本猛