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審査員の思惑
絵本新人賞の審査員を務めた。大手出版社系列の通信制アートスクールに在籍している人が応募資格を持つ賞だ。グランプリ受賞作品は出版が約束される。日本全国から、多様な年齢層の絵本作家を目指す人が、4点の絵とストーリーを添えて応募してくる。
最終選考に残ったのは30作品。審査員は一回目の投票で5枚の付箋を気に入った作品に貼り付ける。ところが一番票を集めた作品がグランプリになるとは限らない。審査員全員が5番目に評価した作品でも最多票は獲得できるからだ。次の投票にはいる前に、ディスカッションがおこなわれる。ここで審査員の思惑が見える。
出版社の代表は売れ筋を考える。芸術性よりも子どもが飛びつきそうな作品を支持する。アートスクールの指導責任者は芸術性優先と思いきや、物語優先。彼は出版まで受講生を指導しなければならない。絵は指導できるが物語は直せないからだという。絵本作家や編集者は視覚化する場面の選び方や、4点の絵の組み立て方などから構成力をチェックする。もちろんぼくも、さまざまな要素をチェックするが、大切にしていることは、個性とオリジナリティーである。技術は伸びるが、センスは固有のものだからだ。新人賞は、原石を発見するチャンスでもある。才能を発見することは楽しみだが責任は思い。賞を受賞することで人生が変わることもある。
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