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東京の画廊の一室。ローランサンの優品が並べられていた。作品を買うときの緊張感は展覧会で絵を見るときとはまったく違う。自分の感性を可能な限り研ぎ澄まして、美術館と作品の運命を決める。いま、安曇野ちひろ美術館に初出品されている「ブリジッド・スールデルの肖像」はそのようにして収蔵品になった。 ちひろはこんな言葉を残している。「はじめてローランサンの絵を見たときは、本当におどろいた。どうしてこの人は私の好きな色ばかりでこんなにやさしい絵を描くのだろうかと」軍靴の足音が迫る時代、十代のちひろはローランサンの絵に憧れ、家には複製画が掛けられていた。ちひろの色感の向こうにはローランサンの色が潜んでいるのかもしれない。 ちひろより35歳年長の彼女はピカソらの画家仲間と親しく交わるが、画風は影響を受けず、自分の世界を貫き通す。やわらかで甘美な絵の背後には強い信念があった。その姿勢はちひろにも通じるように思える。 淡いブルーのワンピースを着て白い犬を抱えた少女を描いた「ブリジッド・スールデルの肖像」は40歳のときの作品。典型的なローランサンスタイルに入る前だが、この絵には彼女の素直で優しい感性が溢れている。 「ちひろとちひろが愛した画家たち」展は11月30日まで。他にちひろが師事した岡田三郎助、丸木位里、俊夫妻、初山滋などの作品も出品されている。
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