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4月5日、朝6時。薄暗い善光寺で御開帳のお朝事に参列する機会を得た。巨大な本堂は身動きもできぬほどぎっしりと人で埋まっていた。読経の声が響くなか厨子の扉が開かれると、堂内にどよめきが広がった。6年ぶりに前立ち本尊が姿を現した瞬間だった。 その日、前立ちの阿弥陀如来像の手につながれた回向柱に触れ、祈りをささげる人は、押し寄せる波のように続いた。 6年前の御開帳では2ヶ月の期間に628万人が訪れた。 善光寺信仰が爆発的に広まるのは12世紀後半からだという。今は絶対秘仏の本尊が、日本最古の霊像と喧伝されたことが一因らしい。布教には、たくさんの善光寺式阿弥陀三尊像と呼ばれる本尊の模像が活躍した。僧たちは三尊像を持って各地を行脚し、霊験あらたかな寺の縁起を語り続けたに違いない。前立ち本尊はその典型的仏像の一つである。 善光寺信仰が広まるにつれ、本尊の厳重な秘仏化が進んだ。その影響は前立ち三尊にも及び、前立ちにもかかわらず本尊と呼ばれ、御開帳のときにしか姿を現さなくなった。 ところで今回の御開帳では、前立ち本尊と瓜二つの阿弥陀三尊像を間近に見ることができる。信濃美術館ではドイツに渡ったその阿弥陀三尊像を里帰りさせ、公開している。美術館で美しい仏像を見ながら古の善光寺信仰に思いを馳せるのはいかがだろう。
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