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信濃美術館で開催中の「男鹿和雄展」に連日驚くほどの人が訪れている。ところが男鹿和雄の名前を大勢の人に聞いたところ、以前から知っていた人はほとんどいなかった。なぜ「男鹿和雄展」に人は集まるのだろう?「『となりのトトロ』など、宮崎駿が監督をしたジブリのアニメーション映画が大ヒットしたから」と大半の人が答えるはずだ。間違いではない。しかし、展示作品のほとんどは背景画だ。映像の中では背景は数秒間で消えてゆく。主人公は出ずっぱりだから印象に残るとしても、背景画はあくまで脇役にすぎない。もっとも、単純化されたキャラクターの顔や動きにリアリティーを与え、印象的な場面を作るためには背景が重要な役割をはたす。どんな映画でも名シーンは印象的な背景とともに記憶に残っている。 男鹿和男は監督と綿密な打合せをして、どの場面にはどういう情景が必要かを考える。黒澤明がとことんロケ地やセットにこだわったように、森も町も家もこだわって描く。書斎の本棚一つにしても、住人の性格を考えなければリアリティーのある描写は生まれない。男鹿はたくさんの写真を参考にしながらそれをドラマティックな風景に変化させる職人なのだ。夕闇迫る森、坂のある町、何かを予感させるような空・・・。彼は光と影と遠近法を自在に操る。 男鹿の絵にはドラマが潜んでいる。見る人はそれを楽しむのだろう。(男鹿和雄展は8月27日まで)
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