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5月末から6月のはじめにかけて休暇を取って、ドイツ南部をレンタカーで旅した。フランクフルトからロマンティック街道を南下し、オーストリア、スイスとの国境にあるボーデン湖畔を西へ向かう。フランスとの国境まで行き、ライン川、ネッカー川を北上してフランクフルトに戻った。 40年前、61歳の東山魁夷はドイツを巡って数々の名作を描いた。このとき、彼は詳細な旅行記を残している。今回の旅の目的は魁夷の文章を手がかりに取材地を特定することだった。果たせるかな、かなりの確立で魁夷が描いた同じポイントに立つことができた。驚いたことに、そこには40年前とほとんど変わらない景観があった。 76年前の1935年にも、ドイツ留学時代の魁夷は同じ地を訪ねている。彼の旅行記には、学生時代と変わらない古い町並みが残されていることに、感慨を持ったと書かれているが、中でもローテンブルクなど第二次大戦の爆撃で破壊された中世の町を、見事に復元したドイツ人の精神に感動している。 「古い建物のない町は思い出のない人間と同じだ」というドイツの諺がある。ドイツ人にとっては、何百年も続く町や建物に住むことによってこそ、語り伝える町の歴史があるのだろう。 古いものを守り続けることや復元することの意味を考えさせられた旅だった。
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