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松本は工芸が盛んだ。昭和初期に柳宗悦の唱えた「民芸運動」に共感した人々が木工や染色などの工芸品を作るようになったのがきっかけらしい。「民芸」というのは民衆的美術工芸を縮めた言葉で、庶民が使っている手工芸品の中にある美を評価しようというのが柳宗悦の考え方だった。工芸とは何か。一言でいえば、手作業によって作られた道具にデザインを施したもの、だろう。工芸品が比較的高価なのは、手間をかけて一点一点が作られているからだ。 工芸品の対極にあるのが大量生産による製品だ。機能重視でぬくもりが感じられないものも多いが、この製品に形を与えるのが、工業デザイナーの仕事だ。松本市美術館で開催されている「柳宗理展」は日本の工業デザインのパイオニアの展覧会だ。柳宗理は民芸運動の提唱者、柳宗悦の長男である。民芸vs工業デザインの企画を「工芸の五月」に仕掛けた発想は面白い。 ところで、現代の道具には形を主張し続けるものと、形が薄らいでいくものがある。前者は工芸品にもある長い歴史を持ったものだ。家具や食器や衣服などはその類。後者は新しく生まれた道具だ。巨大だったステレオは今や小さなiPodになった。テレビはどんどん壁の一部になろうとしている。電話やコンピューターも同類だ。 工芸の季節に道具の形について思いをめぐらせてみるのも一考だろう。
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