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六月に引き続き、東山魁夷の取材地を訪ねて、ドイツ・オーストリアを巡った。今回は北ドイツとアルプスに近いチロル、バイエルン地方である。 ヨーロッパアルプスの山々は巨大な岩で一つの山ができているという印象を受けた。前山がなく、町から突然のように標高の高い岩山がそそり立つ。上高地のようなところに、長い歴史を持った町が点々と連なっている。木組みの家の壁に描かれた何百年も前の絵が道行く人の目を楽しませる。 ドイツの南東の端にあるケーニヒ湖とオーバー湖を訪ねた。峻厳な山間にあるこの細長い湖はケーニヒ湖の突端までしか車は近づけない。オーバー湖へはケーニヒ湖から船で40分かけて反対側まで行き、そこからはひたすら徒歩。オーバー湖の果てにあるたった一軒の酪農家までたどり着くには優に一時間以上かかる。 その家の壁には看板があり、こう書かれていた。 「皆さん 牧草を踏まないように道の上を歩いてください。あなたと牛をすぐ見分けることができるように」 農家は居間の窓口で牛乳やビールを売ってくれる。その居間の壁にはフライパンに並んで絵皿が掛かっている。絵皿には文字が書かれていた。 「静かさは人々にとって神聖なもの ただ狂人のみが急ぐ」 40年前に東山魁夷が訪れたときにも同じ絵皿がかかっていた。ここではゆっくりと時が流れていた。
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