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「官僚の言葉」
高校時代、美しい先輩から演劇部に誘われた。この人と同じ部室にいたい、という単純かつ不純な動機で入部した。裏方なら何とかなると思っているうちに、演出をやり、シナリオを書くようになった。比較的受けがよかった芝居は自分の内部にあるエエカッコシイの部分やドジな部分を戯画化したものだった。人は、誰の心の中にも巣くっている愚かさを笑うのが好きなのだろう。
三月下旬、まつもと市民芸術館で『かたりの椅子』(永井愛・作・演出)という芝居を見た。東京郊外のある市を舞台にアートフェスティバル実行委員会の面々が繰り広げる騒動を描いた作品だ。物語は文科省のエリート官僚だった文化振興財団理事長と実行委員長を引き受けた地元アーティストの対立を軸に展開する。客席からは笑いの渦が沸き起こったが、そのほとんどは官僚的な発想と言葉の愚かさに向けられていた。同じ登場人物が難しい言葉や敬語を並べたてているときは官僚の顔になり、本音を語るときは方言になっていた。 官僚主義とは何なのだろう。新しいことはやらない主義、上司を褒める主義、流れにはむかわない主義…。これは、公務員にだけに当てはまるものではない。この芝居は権威を笑いながら、自分の中にある官僚主義を気づかせる。ともあれ、官僚主義のはびこるところには芸術も文化も育たない。
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