松本猛(たけし) 公式サイト / 2010.2.9信濃毎日新聞【文化面】東山魁夷が選んだ風景・ドイツ・オーストリア編④

活動情報»活動情報一覧

カテゴリ: 活動情報 >雑誌・新聞掲載・出版

2010.2.9信濃毎日新聞【文化面】東山魁夷が選んだ風景・ドイツ・オーストリア編④

更新日:2010.02.10

「静かな町 バート・ヴィムプフェン」何げない路地を見つめ

4 静かな町(ヴィムプフェン)

フランクフルトから南へおよそ百キロメートル。ネッカー川沿いの古城街道にバート・ヴィムプフェンの町がある。川に掛かる橋の上から緑の崖の上に4本の塔がある古い町が見えた。東山魁夷が描いた絵と同じ景色(写真参照)だ。彼もこの橋を渡ったのだと思いながら、町はずれに車を置き、塔を目指して坂を登った。観光客がほとんど見あたらない静かな町だった。
魁夷の足跡を追い続けていると、彼の行動パターンが読めてくる。町に入るとまず、全体像を把握するために高いところへ登る。塔があるときは塔へ、丘や山があれば必ずそこにも登る。 
私は「静かな町」に描かれた道の奥の方から歩いてきたので、この景色に気づかず通り過ぎてしまった。道で出会った老婦人に絵を見せて場所を尋ねる。その人はすぐに分かったようだったが、英語が通じない。すると私をある家へ連れていった。庭は花であふれ小粋な置物がいくつもあった。英語を話す女性が笑顔で現われ、青い塔の上からの景色だと教えてくれた。気がつくと、どの家にも花が溢れ、競うように楽しい佇まいを見せている。一軒一軒の住人が家を愛し、町を愛していることがよく分かる。
青い塔の重い扉を開け、延々と階段を登ると最上階に窓口があった。本を読んでいた青年からチケットを買う。奥を覗くと、その青年が住んでいるように見えた。塔には中世の時代から絶え間なく番人が住み続けていたそうだ。
「静かな町」は塔の上の回廊からみた景色だ。ネッカー川が流れる雄大な風景でもなく、立派な二つの塔を持つ教会でもなく、魁夷はここから何気ない路地を見つめた。手前の家の窓からは人が広場を眺め、奥の張り出し窓には花が飾られている。魁夷はこの町の静かな生活に心を惹かれたのだろう。

松本猛

活動情報雑誌・新聞掲載・出版:新着記事から5件
2024.10.28
子どもの文化
2024.10.24
【講演】11/10「子どもの幸せと平和を描き続けた ちひろの世界を語る」
2024.10.06
【特集記事】東京新聞
2024.09.25
【講演】10/20 ちひろ没後50年「絵本史のなかのいわさきちひろ」
2024.09.16
信濃毎日新聞
クリックしてFeedを登録サイト全体の新着情報をFeed配信中

活動情報

ブログ

QRコード/ケータイで見る

ケータイでもご覧いただけます。
左のQRコードを読み込んでください。うまく読み込めない場合は下のURLを直接入力してご覧ください。

URL → http://www.takeshi-matsumoto.jp
→

美術館サイト紹介

安曇野ちひろ美術館サイトへ
ちひろ美術館・東京サイトへ

このページのトップへ