カテゴリ: つれづれ日記
3月1日から、東京と安曇野のちひろ美術館が冬季休館を終え開館した。東京では「窓際のトットちゃん展」安曇野でもピエゾグラフによる「窓際のトットちゃん展」を開催している。
東京館でオープニングに先立って黒柳徹子さん(東京館の館長である)の講演があった。現在、「窓際のトットちゃん」の出版部数は国内で760万部。もちろん戦後最大のベストセラーだが、日本だけでなく世界30カ国以上でも翻訳されている。正確に何カ国といえないのは、出版契約を結んで出版している国のほかに、出版に関する取り決めに参加していない国があり、そこでは海賊版が出版されているからだ。その国々の数はかなりの数に上るらしい。
なぜ、トットちゃんの本が、これほどまでに普及するのだろう。「トットちゃんがやりたいことをやりまくっていく痛快さ、楽しさが、読者を喜ばせるにちがいない。子どもってこうなんだ」と誰もが共感できる姿が描かれているが、自分ではなかなかあそこまではできない。トットちゃんに空想の中で自分を重ねることは楽しいことだ。その楽しさの中に平和の問題、平等の問題、教育の問題等々、たくさんのわれわれが考えなければならないことが、ちゃんと書かれていることがすごい。
黒柳さんと雑談をしているとき、英国のエリザベス女王とあったときの話しを聞いた。皇室のように高貴な方々に対しては、問われたことに答えるだけ、というのが礼儀であり、しきたりなのだそうだ。ところが、黒柳さんは、例によって質問されたあと、自分からも質問してしまったのだそうだ。女王は一瞬びっくりして、固まったものの、ちゃんと応じられ、それから20分も会話が続いてしまったという。後の人たちをずいぶんと待たせてしまい悪かったという話しだった。そのあとの黒柳さんが言った言葉が面白かった。「私は、ゴリラでも、女王様でも、どこの国の子どもでも同じように話しちゃうのよね」
トットちゃんの本の面白さは、人間のみならず、動物にでも何にでも、同じように興味を持ち、差別や区別するという発想がまったくないところにあるのだと思う。
ぼくの母、いわさきちひろも、その意味では黒柳さんと似ているところがあった。二人は出会ったことはなかったけれど、黒柳さんの文章とちひろの絵がハーモニーを奏でることができたのは、共通の感性を持っていたからだと思う。
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