カテゴリ: つれづれ日記
映画監督、西川美和さんの小説「その日東京駅五時二十五分発」という小説を読んだ。
終戦の日、特殊情報部に在籍していた主人公は情報をすべて知っていて、部隊の解散にともなって故郷の広島へ向かった。伯父の手記を元に書いた小説だが、1974年生まれの筆者の視点が、今までの戦争文学とはまったく異なっていて、思わず引きこまれた。
彼女は、3.11を実家の広島で、執筆中に知ったという。この本の凄さは、原発事故、震災という事態をリアルタイムで認識しながら、人間について、戦争ということについて深く思考したところにあるのだろう。
日本が戦争に突き進むことに対して、多くの人は疑いを持たなかった。原子力の平和利用という名のもとに増殖を続けた原発に対しても同じだ。この本は、今我々は何を考えなければならないかを、静かに問いかける。いささかのプロパガンダ臭もなく、淡々と美しい文章を読ませながら、その世界に浸らせ、読者に自分のあり方を考えさせる。筆者自身もその世界に浸りながら、思考していたのだろう。良い文章を書くとはたぶんそういうことなのだ。この若い書き手に学ぶところが多い。
彼女は松たか子と阿部サダヲの映画「夢売る二人」の監督だという。映像の世界も見てみたい。
<講演とテレビ出演のお知らせ>
29日10時よりに松本市の松本筑摩高校で「今、子どもたちに伝えたいこと ―福島を訪ねて―」という講演を行います。福島から避難してきている「手をつなぐ3.11」代表の森永敦子さんとのトークもあります。お近くの方で、この問題に関心があり、ご都合がつく方はどうぞお出かけ下さい。
また、同日午後2時半ころより一時間ほどabn長野朝日放送の生番組に出演します。8月に出版した絵本『りんご畑の12か月』やちひろ美術館、親しかった絵本画家瀬川康男さんのことなどいろいろ話します。長野在住でお時間のある方はどうぞご覧ください。
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