カテゴリ: つれづれ日記
9日から松本市美術館で「こころはずむ えほん の せかい ちひろ美術館コレクション 世界の絵本大集合!」が始まった。
20世紀初頭、子どもの絵本の黎明期に活躍したイギリスのケート・グリーナウェイなどから、アメリカの絵本黄金期の作家、そして、現代のミリオンセラーの絵本作家の作品など約150点が展示される。安曇野ちひろ美術館でもこれに呼応して、100点規模の「国際絵本コンクール受賞画家展」を開催し、2館で連携した取り組みになった。この二つの展覧会をみるとちひろ美術館のコレクションの全貌が分かる、といいたいところだが、ちひろ美術館のコレクションは、現代作家だけでも、32カ国199人の画家による約26000点の作品があるから、全貌とはいえない。しかし、主要な作品はかなり網羅できているので、アウトラインは分かっていただけるだろう。
今回の出品作品は、ぼくが30代の後半から世界中をかけ回って、さまざまな画家たちと直接交渉して集めてきた作品が多いので、展示をみていると、いろいろなことが思い出された。子どもの本の絵を描く画家たちは画壇的権威を求めず、どこかで子どもの部分を持っている人が多かった。それでいながら、技術的には超一流で、魅力的な人ばかりだった。彼らとの出会いから、ぼくはたくさんのことを学んだ。
松本市美での展示は、学芸員がオリジナリティーを出そうと工夫してくれたおかげで、見慣れているちひろ美術館の展示空間とは違い、興味深かった。
建物の入口から3種類の足跡が展示室の中までずっと続いている。一つは子どもの足跡、もう一つはアヒルのような足跡、最後の一つが何の足跡なのかどうしても分からない。展示室のたくさんの作品の前にもこの足跡がある。展示室の出口の近くで、足跡は最後の展示作品に向かって壁を登り始めた。最後の作品はいわさきちひろの絵本『もしもしおでんわ』の一場面だった。
女の子とアヒルが散歩をしている。その後ろには色とりどりのちょうちょが並び、そして最後にはなぞの足跡の・・・。
つまり、足跡はこの画中に描かれた登場人物たちのものだったのだ。美術館という空間を使って、一片の絵本の世界を作り出したということだ。美術館の巨大な壁に長新太作品である、鼻で大きな池を描く象がいたり、担当学芸員をはじめ展示の製作スタッフたちもこの展示を楽しんでくれたようで、うれしかった。
ところで、なぞの登場人物は種明かしは絵本評論や、映画評論ではしてはいけないことだが、ここでは、展示を見に行けない人もいるだろうから、そっと教える。女の子が、電話をかけてなかよくなった真っ赤なお日様が、丸いからだから短い足を出して、いっしょに散歩をしているのだ。
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お日様がいっしょに歩いている。
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