カテゴリ: つれづれ日記
彫刻家の佐藤忠良(ちゅうりょう)さんが3月30日に亡くなった。98歳だったから大往生というべきなのかもしれないけれど、つい数年前まで自転車に乗り、アトリエの中も走って動いていたので、やはりショックだ。いわさきちひろとも親しく、ぼくは子どものころからお目にかかっていた。
ちひろ美術館を作ってからは、折に触れてお会いする機会があった。「忠良とちひろ展」を企画させてもらったこともある。ぼくがアトリエをお訪ねしたり、忠良さんが美術館にいらっしゃることもよくあった。
忠良さんは一時期、「小児科」と呼ばれるほど、子どもを作っていた時期があった。本当に動き出しそうな子どもの彫刻は、抱きしめたいほどかわいい。よくおっしゃっていたのは、俗にこびるようなかわいらしさに向かってはいけない、わかりやすく親しみが持てることは大切だが、ぎりぎりのところで踏ん張らねばならない、ということだった。もう一つ印象に残っているのは、人は重力に逆らって立っている。彫刻は重力を跳ね返すような内なる力が必要だ、と語っていたことだ。
忠良さんの彫刻に感じるエネルギーは、その生き方にも関係しているだろう。重力に逆らうように、権力に迎合しないでご自身の信じる道を貫いていらした。
「おおきなかぶ」という絵本も描かれたが、絵本の読者のお母さん方に会うと「彫刻も作られるのですか」といわれる、とうれしそうに笑っていた。
忠良さんのおしゃべりを聞くことが出来なくなったことはさびしいけれど、作品のなかにたくさんの思い出が詰まっている。
どうぞ安らかにお眠りください。
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